「公明党」に続いて今度は「幸福実現党」


「公明党」に続いて今度は「幸福実現党」

今こそ「宗教法人と政党」の関係にメスを!

選挙戦で会館をフル活用してきた創価学会
宗教施設での選挙活動は「隠れた補助金」

五月二十五日、大川隆法率(ひき)いる新興宗教団体「幸福の科学」が、「幸福実現党」なる政治団体を結成、次期衆院選に大川の妻・きょう子をはじめとする多くの教団幹部を候補者として擁立(ようりつ)する、と表明した。
これについて、各マスコミがさっそく反応。その中で共同通信社は、「宗教と政治論議再燃か」と題した記事を配信。宗教政党を自認する「幸福実現党」の出現により、「(宗教と)政治とのかかわり方をめぐる論議が再燃しそうだ」とした。
憲法論議もたしかに重要だが、衆院選が目前に迫(せま)った今、緊急の課題となるのは、宗教団体が行なう選挙活動の正当性であろう。
そこで本紙は、その視点から「政治と宗教」の問題に斬(き)り込む。

創価学会と似た「幸福の科学」
「政治力で理想を実現」との考えも

「幸福の科学」は、開祖・大川隆法の著書を〝経典〟と見立て、それを会員に次々と買わせることで急成長してきた新興宗教団体。その姿は、池田大作を〝大聖人に勝(まさ)る現代の仏〟と崇(あが)め、池田の著書である『人間革命』を〝現代の御書〟と称し、会員に池田の著書の購入を督励(とくれい)してきた創価学会の姿に重なる。
また、大川隆法を〝国師〟と立てて、その理想を実現せんとする「幸福実現党」の在り方は、創立時の公明党のそれにソックリ。
そのことをそうとう意識している創価学会関係者もいるようで、共同通信の取材に対し「うち(※学会)の脱会者がいるから、うちをまねている部分がある」と答えたという。
当然のことながら、両者の選挙戦術も似たようなものになるかもしれない。

矢野氏が明かす学会の選挙活動の実態
無償で使用する会館が活動の「要」に

矢野絢也氏が、著書『黒い手帖』で指摘した創価学会の選挙活動は、
「選挙になると、学会の会館がフル活用されており、選挙対策用事務所として使用される。それに対して、候補者が対価を支払うことはない。
学会側はそのような使用状況はないと否定しているが、私自身も過去九回の選挙を戦っており、そのたびにお世話になっていたので、何をかいわんや、である。」
「学会員の選挙運動は、次の三段階に分けられている。
第一段階は『全国交流』。個々の学会員が友人知人、親戚縁者を全国を行脚(あんぎゃ)して訪ね、話し込み、比例区の票固めをする。つまり、遠方から地ならししていく作戦で、電話ではなく、直接訪問が原則になっている。そのためにかかる交通費などの諸経費は、すべて学会員の個人負担である。
第二段階は『地域交流』。地元の都道府県内の重点選挙区を中心に回る。人脈をたどって戸別訪問するのだ。
さらに第三段階として『地元交流』がある。『地元交流』はいわゆるご近所を回って、党の候補者への投票を依頼する、最も大切な足元を固める活動だ。
こうして全国、地域、地元と、三段階の活動を、数回、順ぐりに繰り返す。その結果は、上層部に報告され、状況を把握(はあく)した上層部は、動きが悪いと地元幹部を叱咤(しった)する。(中略)
こうした選挙活動の拠点になっているのは、全国に大小合わせて一〇〇〇ヵ所ほどある学会の会館である。
各都道府県の中心的な会館には、その地域のトップクラスの幹部が集まり、本部から下りてきた活動方針を確認、その後、都道府県内各地の地域ごとの会館に次のクラスの幹部が招集され、方針が伝達されていく。しかし、机上の空論になっては意味がないので、確実に実践されるよう、『連絡、報告、確認』を合い言葉に方針が徹底される仕組みになっている」
というもの。
こうした活動が、衆参両院、統一地方選、また、東京都議選など統一外の地方議会選挙等で繰り返し行なわれてきた――。

宗教施設での選挙活動を見逃すな!
北野教授は「隠れた補助金」と指摘

矢野氏が述べた、創価学会のこうした宗教施設利用や選挙活動について、税法学者の北野弘久日本大学名誉教授はかつて、本紙の取材に対し、宗教施設の使用実態や職業幹部の行動を把握しようとせず、免税の適否を判断しないことは、「創価学会に対する隠れた補助金」を出すに等しく、「適用違憲」となる、と指摘し、その理由を次のように語った。
「固定資産税や都市計画税は、固定資産についての現況課税の租税ですし、地方税法四〇八条は、当該物件に対する課税庁の毎年の実地調査を義務付けていますから、たとえ、それが宗教法人の施設であろうと、利用状況を精査した上で、課税・非課税を決めなければならないはずなのです。」
「(創価学会の、宗教施設を使っての選挙活動のような)そういう実態があり、これに対して実地調査が行なわれない、当然ながら課税もされない、ということになれば、それは『適用違憲』ということになります。
つまり、本来なら課税すべきところを課税しないというのは、税額相当分を宗教法人に〝補助〟したことになる。私はこれを『隠れた補助金』と呼んでいますが、これは宗教法人に対する公金の支出を禁じた、憲法一四条・二〇条・八九条に抵触することになり、非課税規定を適用すべきでないのに、同非課税規定を適用することは『適用違憲』ということになるのです。」
「(学会職員の)彼らが、学会職員の立場で選挙活動を行なっていたとすれば、これも問題です。専従職員ではなくても、たとえば交通費などを学会から支給されている幹部も同様です。彼らに支給されていた給料や手当の一部は、施設の固定資産税同様、『隠れた補助金』に該当する、といえるでしょう。」
北野教授は以前から、こうした問題点を指摘し続けてきた。
だが、これについて、新聞・テレビなどのメディアはほとんど報道しようとしてこなかった。このようなことの裏側には、創価学会が大手新聞社に『聖教新聞』等の印刷を発注したり、新聞の全面広告や、テレビ・ラジオの番組への提供や頻繁(ひんぱん)なスポット広告を行なう、といった創価学会の〝カネ縛り〟に遭(あ)っている、と指摘する声(『週刊ダイヤモンド』2004年8月7日号)もある。
そうした状況のためか、政治もメディアも、創価学会についてはことさら過敏になり、創価学会の選挙活動の実態調査も行なわれぬまま、時間が無為に流れてきてしまった。
そのような中、「幸福実現党」なる、新たな〝宗教政党〟が誕生し、創価学会に対すると同じように、「隠れた補助金」を与え、さらに「適用違憲」の状況が増えることが懸念(けねん)される事態になっているのである。

「会館の使用は適切」と開き直る学会
ならば、国会の場で白黒をつけよ!!

ところが、この問題の元来の当事者である創価学会は、政治・メディアの沈黙をいいことに、〝開き直り〟ともいえるような主張を展開している。
それは、六月四日付の『聖教新聞』に掲載された、学会最高幹部による紙上座談会――「学会の会館は『安心の灯台』」との大見出しが打たれたその座談会での、元東京都議・龍年光氏(故人)が起こした裁判に関する、次のやりとりである。
「棚野(男子部長)一方で裁判所は、学会の支援活動における会館の使用実態について〝社会通念に照らして『もっぱらその本来の用に供している』といえる〟と明確に認めた。
杉本(婦人部長)要するに〝学会の会館は、選挙の時期にも、宗教団体の施設として適切に使用されている〟と認定されたわけですね。当然の判決ですよ。
金沢(総東京長)竜のやつが騒ぎ回った結果、かえって裁判でも、学会の正義が、いっそう明瞭、明確になった(笑い)。
まさに『墓穴』だ(爆笑)。」
龍年光氏が学会施設の使用実態を証明しきれなかったことをもって、文字通りの言いたい放題だ。
だが、学会がこのように胸を張るのであれば、その活動に疑問を呈している矢野絢也氏、元公明党参議院議員の福本潤一氏を国会に招致することに異存はないはずだ。
というよりも、それによって、公の場で学会の正当性を証明できるのだから、むしろ自ら積極的に招致を働きかけるべきだろう。
それにも拘(かか)わらず、参議院の審議における再三の招致要請が未だに実現していないのは、いったいどういうことなのか――。
創価学会よ、姑息な言い逃(のが)れはたいがいにして、いざ国会の場で白黒をつけよ!
【慧妙平成21年6月1日号より転載】