矢野氏の招致要求で窮地の学会・公明党 消えない疑惑「政治と宗教と金」


矢野氏の招致要求で窮地の学会・公明党 消えない疑惑「政治と宗教と金」

民主党、矢野氏の『黒い手帖』に着目
矢野氏の招致と税制議論を求める

五月二十日、参議院予算委員会で質問に立った民主党・峰崎直樹議員は、国の財政が逼迫(ひっぱく)する中で、巨大宗教法人の税の在(あ)り方についても議論すべきだと指摘。集中審議を行ない、そこに、参考人として矢野絢也元公明党委員長を招いてほしい、と主張した。
峰崎議員が矢野氏の参考人招致を求めるきっかけになったのは、矢野氏が、本年二月に上梓(じょうし)した『黒い手帖』に書いた、創価学会にまつわる「カネ」の問題であった――。

『黒い手帖』に学会の脱税疑惑が
この際、宗教法人税制を議論せよ!

現在開会中の国会においての、最重要の議案といえば、それは間違いなく平成二十一年度・第一次補正予算である。
自民・公明の賛成多数によって衆議院を通過した同議案は、参議院においては、このままの審議が続けば、民主党その他の野党による反対多数によって否決される、との見方が大勢を占めている。
この大型補正予算、その使途についての議論と同時に、財源問題もまた、大きな争点となっている。
そうした中で、五月二十日に行なわれた参議院予算委員会の審議において、質問に立った民主党の峰崎直樹議員は、矢野絢也元公明党委員長が議員時代に記した〝黒革の手帖〟について、次のように言及した。
「元公明党委員長の矢野絢也さんの『黒い手帖』を読みました。いわゆる、宗教法人の脱税問題についても、そこ(黒い手帖)に書かれている、というんです。」
「こういう問題が指摘されているということは、やはり日本の政治、これだけ財政がたいへんな時に、何も創価学会だけではなく、巨大宗教法人の税の在り方というのはどうあるべきか、そういったことを、私は議論すべきだと思います。」
「政治の基本に関わり、税財政の根幹にかかわってくるような問題についての集中審議を要求したいと思いますし、できれば私は、参考人として矢野絢也氏を呼びたいと思います。」
来年三月末の、国・地方合わせた長期債務残高が八百十六兆円にも上ることになり、景気対策の一方で、消費税の税率アップを含む税制改革の必要性も指摘される中、とかく〝金〟の問題が取り沙汰される宗教法人を〝蚊帳(かや)の外〟に置くわけにはいかない。峰崎議員はその角度から、創価学会問題に迫(せま)ったのである。

学会に絡む不透明な金の流れ
「脱税揉み消した」との証言も

予算委員会の質疑の中で、峰崎議員が指摘した『黒い手帖』とは、講談社から発行されている矢野絢也氏の著書であり、それには、本紙がかねてから報じてきた、三人の元公明党議員による矢野氏の資料持ち去りに関わる顛末(てんまつ)を中心に、持ち去られた「黒革の手帖」に記された内容の概要と、事件に至る背景や、創価学会と公明党の関係やその体質などについて記されている。
その中で、手帖の中味そのものについては、ほんのさわり程度にしか書かれていないのだが、それでも、あの「一億七千万円入り金庫投棄事件」に関する次のような記述は、驚愕(きょうがく)に値するだろう。
「一九八九年六月、横浜市のゴミ処分場に、一億七五〇〇万円の入った古い金庫が捨てられていたとの事件が発覚した。翌月、聖教新聞専務理事で、創価学会の金庫番といわれる中西治雄氏が『持ち主だ』と名乗り出て、記者会見を開き、こう証言する。
古い金庫に入っていたのは、『昭和四六年(一九七一年)頃から三年間、総本山大石寺境内で〝金杯〟の売却で二億円の売り上げがあり、予想外にうまくいき、出た利益。その金はすぐに使うつもりはなかったので金庫に入れておいたが、そのうち忘れてしまった』
『それに気づいたのが七月一日』
『金庫は学会の知人から譲(ゆず)り受け、自宅が狭いので聖教新聞の地下倉庫に置いていた』
『法人登記はせず、個人で商売していたもので、脱税の金』
この会見を受け、聖教新聞は、中西氏の言い分をほぼ追認し、中西氏個人の犯罪と断罪したが、中西氏の弁明には矛盾(むじゅん)点がいくつかあった。(中略)
そのため、様々な憶測がとんだ。もちろん、私はこのカネがどういう筋のものか、詳(くわ)しく聞いているのだが……。(中略)
捨て金庫事件の直後に、中西氏と話したときに、彼の口から出たのも『模刻事件(※池田大作が、日達上人の允可を得ぬまま七体の御本尊を板に模刻した事件)の罪』という言葉だった。
『模刻事件の罪滅ぼしだと思って、私は今回の一件を引き受ける』と――。」
矢野氏は同書で、創価学会への税務調査の発端になったルノアール絵画疑惑(創価学会が購入したルノアールの絵画の取り引きに絡む、不可解な金の動き。結局、三億円が〝行方不明〟に)などについても言及。そして、
「こうした社会を騒がせた過去の事件の真相や顛末が、私の黒い手帖には、それに関して喋(しゃべ)った人々の実名と共に記されているのだ」
と記しているのである。
なお、創価学会の脱税疑惑については、平成五年十一月二十六日、元自民党副総裁の渡辺美智雄氏(故人)が
「自民党はこれまで、国会で(公明党から)法案への賛成を得るため、創価学会の脱税をもみ消したりした」(『朝日新聞』平成五年十一月二十八日付)
と発言した事実があるが、これについても、矢野氏であれば、その真相を熟知しているであろう。

池田に贈った〝お礼〟の行方は?
不可解な学会の会計処理の数々

こうした疑惑の他にも、学会の〝収入〟に関しては様々な問題点があることを、矢野氏は、『黒い手帖』で次のように指摘している。
「創価学会、公明党の不明瞭なカネの流れは、『政教分離』という観点からもたびたび批判の対象になってきた。
かくいう私も既(すで)に述べたように、国会議員を辞めたときに、あくまでも感謝の気持ちからお礼として、まとまったおカネを池田大作名誉会長宛てにお届けした。(中略)
しかし、お届けするとはいえ、おカネを直接、池田氏に渡すわけではない。学会の『第一庶務』という池田氏専用の秘書集団にお願いする。第一庶務は、膨大(ぼうだい)な人数の優秀なメンバーで編成されている。
そのため、寄付したおカネがその後、どこへ流れたのかは定かではない。池田氏の個人の収入になっているのか、学会本部に入るのかは、学会の経理が決めている。
いずれにしろ、不明瞭なカネの流れには問題が多い。仮に池田氏個人の収入となっているのなら、申告はしているのだろうか。納税がどうなっているのかという問題が出てくる。
また、学会本部で処理しているとなると、今では政治家の献金への批判もあって、法律の問題とも絡んでくる。
宗教団体は非課税であり、『週刊新潮』に掲載された学会広報の話によると、議員や学会員の献金の類(たぐい)はすべて本部会計で処理しているという。そうすると、学会は巨大な非課税資金を得ていることになる。非課税のカネがすべて問題とは思わないが、財務寄付も程度の問題だ。」
矢野氏はこの他、学会の会館が、選挙になると選挙対策事務所に化(ば)ける問題や、福本潤一氏が指摘する「P献金」問題などについても、『黒い手帖』に書いているのである。

矢野氏と共に池田も国会に!
不信払拭のために徹底解明を

しかれば、国会は峰崎議員の要請を入れ、まずは多くの事件・疑惑の真相や創価学会の裏事情を知る矢野絢也氏を国会に招き、事実関係を質すべきである。
しかしそれだけでは、〝矢野氏の証言だけでは信用しがたい〟あるいは〝矢野氏一人に事情を聞いたのではバランスを欠く〟といった批判も出てこよう。やはり、もう一方の当事者である創価学会首脳、それも、〝永遠の指導者〟として、実質的に絶対権力を握り続けている池田大作も国会に招き、よくよく事情を聞かねばなるまい。
その上で、こうした事件や疑惑が生じた原因が、もし宗教法人の非課税特権に根ざしているとすれば、それはゆゆしき問題であるから、今後も事件・疑惑の温床になりうる要素を見つけ出し、その部分を徹底的に改正していくべきである。そしてそれこそが、国民の「税」に対する不信感・不公平感を少しでも払拭するために、国会が果たすべき紛(まご)う事なき責務といえよう。
【慧妙平成21年6月1日号より転載】